vol.40

このページでは、日本各地に潜む物の怪を毎回1匹ずつピックアップ。オリヂナルイラストをつけて紹介してゆきます。




根岸鎮衛の随筆、「耳嚢」巻之七に書かれた怪。夜の四谷に白装束で腰から下が見えない化け物が出没した。振り返ると大きな一つ目の怪で、刀で切り倒して見ると、正体は五位鷺だったと謂う。鳥山石燕の「画図続百鬼」には「青鷺火(あおさぎのひ)」という怪が描かれ、年を経た青鷺は夜飛ぶときに羽が光ると説明している。また、以前花の怪の特集でも取り上げたが、鷺に似た美しい花をつける鷺草は、吉良頼康の側室・常磐が飼っていた白鷺の生まれ変わりだと謂う。常磐が父親に充てた遺書を託した白鷺は、途中鷹狩りの鷹に襲われ、多摩川の河原に落ちて死んでしまう。以来その辺り一帯に白鷺に似た花をつける鷺草が生えるようになったと謂う。このように、鷺に纏わる怪異は多い。それは美しい容姿とは裏腹に、その鳴き声が不気味である事や、鳥類には珍しく、夜に餌を捕るという怪しい習性に起因しているのかもしれない。私も幼い頃、陽の暮れた田圃で、ギャッギャッと奇声を発しながら、蛙を啄む鷺に遭遇した事がある。暗闇に大きな翼を拡げる姿は、まるでラドンのように思えたのを、今でも覚えている。
<参考文献>「耳嚢」岩波文庫版      根岸鎮衛著/長谷川強校注
      「鳥山石燕 画図百鬼夜行」  高田衛監修