このページでは、日本各地に伝わる物の怪に纏わる物産を、物の怪観光が誇る物怪博物館コレクションの中から毎回一点づつ紹介してゆきます。




今回紹介するのは郷土玩具や民芸品というより寧ろ美術工芸品といった趣の職人技、江戸の手びねり人形である。浅草浅草寺前の仲見世で数々の江戸趣味小玩具を販売している「助六」。ここには江戸時代の大ヒット玩具「とんだりはねたり」や「ずぼんぼ」が今も売られており、郷土玩具が好きな人なら一度は足を運んだ事があるに違いない。職人達が腕をこらして作り続ける様々な小玩具が所狭しと並ぶ中、一際目を引くのが手びねりの陶製人形。狭いショーケースの中で手のひらサイズの河童や狸が神輿を担いだり、酒を飲んだりと生き生きとした表情を見せる。驚くべき事にこの人形達、竹べら一本と手だけで作り上げられている。制作するのは杉立孝喜氏。彼で3代目となる手びねり人形の職人である。信楽、九谷等良質の粘土を材料に、手の中で土が暖まる前にどんどん形にしていく。その際使用する道具は竹べら一本のみ。目や耳といった細かいパーツは粘土を少しだけすくい取り、手の甲で形にしてから貼り付けていくのだそうだ。完成した物は乾燥させてから焼き、釉薬をかけたりして色を付ける。モチーフは河童や狸、江戸の風物を表す人物等。特に擬人化された河童や狸は、世の中を風刺しているようで面白い。一匹のものもあれば大勢で神輿を担いでいるものもある。写真は狸や狐が化けようとしている処。口から化けた物が風船ガムのように出てきているのが面白い。狸の口からは坊さんが、狐からは女が、河童からは茄子のお化けが出て来ている。しなやかな、動きのある表現とへら痕のいきおい。今にも動き出しそうな素晴らしい出来栄えである。これは1年程前に助六で購入した物。全て手びねりの上、毎回沢山の種類を順番に作っていくので、いつも同じ物が置いてあるとは限らないとか。値段も大きさや組み合わせによって様々。写真の3点はいずれも1萬5千円也。値段に違わぬ名品である。