このページでは、日本各地に伝わる物の怪に纏わる物産を、物の怪観光が誇る物怪博物館コレクションの中から毎回一点づつ紹介してゆきます。




龍は十二支の一つであり縁起物でもあるので、各地で郷土玩具のモチーフとしても盛んに取り上げられている。干支の中でも異彩を放つ幻獣だけに人気も高いようだ。しかし、単なる干支の龍という事であれば、その土地土地のお土産を紹介する物怪物産展としては少々物足りない。そこで今回紹介するのが以前このコーナーでも取り上げた薩摩首人形。その中の龍は干支の首人形としても売られているが、ちゃんと「霧島お浪の龍」という本当の名前と由来を持っている。お浪というのは霧島山の麓に住む年老いた長者夫婦が、龍神に願掛けして授かった女の子の名前である。老夫婦が龍神様のお陰と大切に育てた甲斐あってか、お浪は美しく成長した。しかし、満月の夜が近づく頃になると次第に物思いにふけるようになり、しきりに霧島山に登りたがった。そしてついに満月の夜、老夫婦と霧島山に登ったお浪は龍の姿となって山中の湖に姿を消してしまう。以来湖はお浪の池と呼ばれ、やがて大浪池という名に変わって行った。元々物の怪伝承が大好きな作者の鹿島たかし氏は、この伝承を基に見事な首人形を完成させた。手びねりならではの素朴な風合いと、独特の迫力は、民話の世界とぴったりとマッチしている。大きな物はさらに迫力満点である。中には豆のような物が入っていて、振るとカラカラと音がする仕掛けもついている。遊び心いっぱいの鹿島氏ならではのアイデアだ。民芸品や郷土玩具というと、どうしても鬼、狐、河童といった一般的な物を選びがちだが、同じモチーフでも、その土地にしかないエッセンスを加えると、旅行者にとってはたまらないお土産になる。「霧島お浪の龍」はその好例だろう。価格、小1500円、大6000円也。
<参考文献>薩摩首人形「霧島お浪の龍」解説