このコーナーでは、毎回巷にあふれる様々な商品の中から、その存在自体不思議な物の怪テイストのアイテムをエッセイ風に紹介します。



工作の必需品、カッターナイフは日本人の生み出した製品なのだそうだ。ナイフで物を切る時、実際に切断する対象に触れているのは刃先の一点だけという事に気付いたある日本人が、折ればすぐに鋭い刃先が顔を出す、カッターナイフを発明した。発想のきっかけは割って食べる板チョコだったとか。刃先のほんの一点が欠けただけで切れ味が悪くなる従来のナイフ類は、手入れも維持も大変だった。この発明のお陰で工作分野の仕事の質は格段に上がった事だろう。今にして思えば単純明快な発想だが、このスタイルに落ち着くまでは試作に次ぐ試作が行われた事と思われる。刃と刃の切れ込みのピッチ、角度等、試行錯誤の末の計算された創りである。手先の器用な日本人の使用する道具は、使い易く機能的な物が多いと言われるが、たしかにカッターナイフに関しては日本製に勝る物はないと思う。デザインに惚れて外国製の商品をあれこれ購入してみたが、結局どれも実用的ではなかった。しかしmononoke monoという事であればこの製品をプッシュしない訳にはいかない。黄色い工具で有名な、イングランドはスタンレー社のナイフ199番である。無骨な金属製のグリップのネジを外すと、中に替え刃が収まっている。その刃をグリップで挟み込んで再びネジを締めれば、重厚なナイフに。しかし刃は固定式なので一度セッティングしてしまうと引っ込める事が出来ない為、使わない時にはカバーを使用しなければならない。工具箱の中でカバーが外れていたりして、結構スリリングである。替え刃は前後が刃先になった物を使用。刃先の消耗に対応してこのようなシステムになったようだが、現在のカッターナイフを基準にすると進化の途中といった感じである。手にズッシリと居座るナイフ界のシーラカンス、その扱いづらさを敢えて味わって欲しい。